八ヶ岳南麓の豊かな森に溶け込むように計画された小さなキャビン。大きな開口部により、周囲の木々に包まれるようなスケール感で、自然との距離を感じさせない落ち着いた佇まいを目指しました。

“STAGE”は、自然とともに過ごす時間そのものを空間の主役としたキャビンです。開口部を大きく取り、室内からそのまま連続するようにウッドデッキを設けることで、内と外の境界を極力曖昧にしています。

目の前に広がる森の風景は、時間帯や季節ごとに表情を変え、訪れる人に日々新鮮な感動を与えてくれます。外に向かって大きく開いた空間は、あたかも舞台のように自然を背景に人の営みが立ち現れる設計です。人と森のあいだに流れる空気のゆらぎや光の移ろいまでを丁寧に取り込むことで、ただ「眺める」のではなく、「共に過ごす」感覚を体験できる構成としています。

STAGEの内部は、あえて間仕切りを設けないワンルーム構成としています。限られた面積の中で広がりを感じさせるため、視線の抜けや家具のレイアウト、天井の高さに配慮し、最小限の構成で最大限の開放感を得られるよう設計されています。必要な機能はしっかりと確保しながらも、滞在する人の過ごし方に合わせて空間の使い方が自然と変わっていく柔軟性を持たせています。決まった用途に縛られず、自分のペースで過ごすことができるこの自由度こそが、STAGEの特徴です。使い手自身の感性が引き出されるような、静かで伸びやかな空間体験が広がります。

STAGEの大きな開口部は、単なる採光や通風のためのものではありません。外の自然を「風景」として室内に取り込むために、あえて絵画のように構図を意識したフレーミングで設計されています。朝霧に包まれる森や、午後の木漏れ日、風に揺れる枝葉といった一瞬一瞬が、窓というフレームを通して浮かび上がる構成です。これにより、空間の中で過ごす時間に豊かな物語性が生まれます。また、フレームの内側に腰をかけられる設計とすることで、風景の中に自らが入り込むような感覚も味わえます。窓はただの開口ではなく、外と内をつなぐ「感性の通路」として機能します。

STAGEでは、室内外に用いる素材の質感や色合いを自然環境と調和させることを重視しました。床にはオーク材を採用し、しっとりとした木の表情と柔らかな足触りが空間にあたたかみを加えます。壁や天井には自然光をやさしく受け止める塗装を施し、過度な装飾を避けた素朴な仕上がりとしています。また、家具や照明も自然素材や落ち着いたトーンのものを選定し、屋外の風景がそのまま室内に流れ込んでくるような統一感を意識しました。全体として、自然の中に溶け込むような心地よさと、日々の中にある美しさを丁寧にすくい上げるような空間を目指しています。