茨城県結城市の静かな街角に佇む「カフェ・ロビネ」。アンティーク家具やヴィンテージの扉が織りなす独特の雰囲気が、訪れる人々を包み込む。ここは、オーナーの大木紫(おおき ゆかり)さんが紡ぎ出した日常と調和する特別な空間です。
「『ロビネ』はフランス語で蛇口という意味。設備業を営む主人への感謝と、生活に自然と溶け込む存在になりたいという願いを込めました。」
地元の素材や身体への負担が少ない素材を使用したスイーツや焼き菓子と、落ち着いた空間設計が魅力の「カフェ・ロビネ」。その建築の裏側やお菓子作りへの情熱、そして地域とのつながりについて、大木さんにお話を伺いました。
Profile
大木 紫|Yukari Ōki
茨城県結城市在住。地元の人気カフェ“ラ・ファミーユ”での経験を経て、カフェ・ロビネをオープン。独自のスイーツと心地よい空間作りで、多くの人に愛されるカフェを運営。
日常と調和する場所
茨城県結城市の静かな街角に佇む「カフェ・ロビネ」。店内に一歩足を踏み入れると、アンティークの家具やステンドグラス、木の温もりに包まれた空間が広がります。このカフェは、オーナーの大木さんの思いが詰まった特別な場所。訪れる人々が、ここで日々の喧騒から離れ、自分だけの静かな時間を過ごしています。
「カフェの名前である『ロビネ』は、フランス語で蛇口という意味です。設備業を営む主人への感謝を込めて名付けました。水のように、生活に自然と溶け込む存在でありたいという願いも込めています。」
地域の人々にとって「暮らしの一部」となることを目指し作られたこのカフェは、ただ食事や飲み物を楽しむだけではなく、訪れる人々の心にそっと寄り添う存在となっています。


カフェ開業への道|ラ・ファミーユでの経験
大木さんがカフェを開くまでの道のりは、一つの夢から始まりました。学校卒業後、カフェやインテリアショップを展開する会社の店舗スタッフとして働き始め、その後地元の人気店「カフェ・ラ・ファミーユ」に就職します。このカフェには独自の“3年ルール”があり、3年間で多くを学び取ったスタッフが卒業し、自分の道を切り開いていく仕組みでした。
「ファミーユでは、やる気さえあれば何でも挑戦させてもらえました。個人店ならではの自由さがあって、店舗運営の仕組みも学ぶことができました。」
3年間の修行は、簡単なものではありませんでした。日々の業務をこなすだけで精一杯だったという大木さん。しかしその経験は、彼女がカフェ経営者として成長するための確かな基盤を築くことになりました。
「とにかく必死で、働いている間は自分のお店について深く考える余裕はありませんでした。でも、3年を終えたときには『次は自分のカフェを開く』という強い決意を持っていました。」
卒業後、大木さんは自らの手でカフェのビジョンを描き始めます。独学でお菓子作りを学びながら、彼女の夢は少しずつ形になっていきました。


独学で磨いたスイーツ作りの技術
「自分の体に合うお菓子を作る」。これが、大木さんのスイーツ作りの原点です。
アレルギー体質だった彼女は、体に負担の少ない材料を使ったスイーツを追求しました。マクロビオティックにも関心を寄せましたが、ストイックすぎると感じたため、自分に合ったバランスを模索したといいます。
「甘さ控えめで、何個でも食べられる軽やかなお菓子を目指しました。市販の洋菓子はどうしても重たく感じてしまうので、優しい甘さと素材の味を活かしたものを作りたかったんです。」
特に、ミネラル分の多いキビ糖やセンソウ糖を使用し、バターの代わりに菜種油を使うことで、より軽やかで身体に優しい仕上がりを実現しました。こうした工夫は、彼女自身の食生活の改善から得た知識に基づいています。
毎日のようにお菓子を焼き、家族や友人に試食をお願いする日々。数えきれないほどの試行錯誤の末、カフェ・ロビネで提供されるスイーツは完成しました。素材の持つ力を引き出し、食べる人の心と体に優しいお菓子。その味わいは、多くの人に愛されています。


店舗デザインへのこだわり
「カフェ・ロビネ」の建物は、大木さんがイギリスのカフェの写真に一目惚れしたことから始まりました。
「その写真がどうしても忘れられなくて、その雰囲気を再現したいと思いました。」
計画前に購入したヴィンテージの扉は、アンティークだからこその一点もので、見つけた瞬間に「これしかない」と思ったそうです。また、家具選びにおいてもカフェ・ラ・ファミーユ時代に店長とともに訪れたインテリアショップ巡りが影響を与えています。短大時代にインテリアを専攻していた彼女ですが、当時流行していたミッドセンチュリーのスタイルよりも、アンティークやヴィンテージの家具に惹かれたといいます。
既存の建物を増築し、ヴィンテージ素材を随所に取り入れることで、独自の空間を作り上げました。例えば、入り口の扉はイギリスで100年以上前に使われていたアンティーク品。店舗の西の扉に使用されているステンドグラスは、職人に依頼して手作りされたものです。



地域と繋がるカフェの役割
カフェ・ロビネは、地元の素材を生かしたスイーツ作りに力を入れています。有機栽培や低農薬で育てられた果物を知り合いの農家から仕入れ、その季節ならではの素材を活用し、体に優しいお菓子を提供しています。
また、地元の人気カフェ「カフェ・ラ・ファミーユ」とのつながりを大切にし、結城やその他の地域で行われるイベントにも積極的に出店しています。こうした活動を通じて、地域に密着した存在としての役割を果たしています。

暮らしに欠かせない「お茶の時間」
大木さんの暮らしの中で、欠かせないのが「お茶の時間」です。朝に一杯、そして営業の最後に飲む一杯のコーヒー。この1日2回のコーヒータイムは、心を落ち着けるための大切な時間だといいます。
「営業が終わりに近づいて、最後に飲むコーヒーは本当にほっとする瞬間なんです。」
忙しい日常の中で、自分を取り戻すためのひととき。そんな時間が、カフェ・ロビネの穏やかな空間作りにも影響を与えているのかもしれません。

無理のない範囲で続けるということ
「無理なく、でも長く続けられるカフェでありたい」。それが、大木さんのカフェ運営における信念です。
派手なことをせず、日々淡々と営業を続けるカフェ・ロビネ。その姿勢には、大木さんの「家族と共に」という思いも込められています。
「子どもが成長しても、私自身が年を重ねても、無理のない形でこのカフェを続けていけたらと思います。」
家族や地域とのつながりを大切にしながら、長期的な視野で運営を続けることを目指す大木さん。その姿勢は、訪れる人々にも安心感を与えています。

小さな幸せを紡ぐ場所 ー 変わらぬ想いとともに
カフェ・ロビネは、これからも進化を続けます。大木さんは、将来、軽食の提供や新しいメニューの開発を検討しているそうです。
「ただ、無理のない範囲でやりたいですね。あくまで自分らしく、そしてお客様が喜んでくれる形で。」
結城の街角で、日常と調和しながら進化を続けるカフェ・ロビネ。その未来には、大木さんの変わらない情熱が輝いています。

Credit
Written by Ryu Kanari (MATOMA LLC)
Interviewer Momoko Ochiai
Photographed by Ryu Kanari (MATOMA LLC)
Links
Instagram|https://www.instagram.com/shinc_lab/
DETAILS
cafe robinet
〒307-0053 茨城県結城市新福寺4-6-7
[Google Map]
営業時間|木・金曜日 11:00~16:00(定休日不定休)
※詳細は店舗へお問合せください。