八ヶ岳南麓の豊かな森に溶け込むように計画された小さなキャビン。大きな開口部により、周囲の木々に包まれるようなスケール感で、自然との距離を感じさせない落ち着いた佇まいを目指しました。

“LOFT”はロフト部分が前方に大きく張り出した迫力ある外観。
床面の段差を活用して主寝室も副寝室も大きなガラス窓で囲まれた開放感あふれるロフト式の寝室、ガラス扉でウッドデッキ・テラスと一体となったアウトドア・リビングから、自然との一体感をお楽しみいただけます。
広めのシャワールームも備え、小さなお子様連れでも快適にお過ごしいただけます。

LOFTは、限られた平面の中に立体的な広がりを生み出す設計によって、包まれながらも抜けのある空間をつくり出しています。平屋とは異なる、上方向の高さや奥行きを感じられる構成は、限られたスペースであっても視覚的・体感的なゆとりをもたらします。ロフトの上下に設けられた就寝スペースは、天井が低く抑えられていることで、自然と身体が落ち着き、安心感のある居場所に。天井が高く抜けるダイニングや窓辺と、こもれるような場所とのコントラストが、空間にリズムを与えています。滞在者の動きや気分に合わせて居場所を選べる、スケールの工夫に満ちたキャビンです。

LOFTの象徴ともいえるのが、スキップフロアのように設けられたベッドスペースです。屋根の形状に沿った勾配天井と、外からの光がやわらかく差し込む開口部により、ここはただ眠るためだけの場所ではなく、自分と静かに向き合うための小さな「余白」として機能します。本を読んだり、日記を綴ったり、窓の外をぼんやり眺めたり…。生活の中にあるささやかな時間を、豊かなものにしてくれる空間です。

一日を通して光が移ろうように、開口部の配置や天井高を丁寧に設計しています。ロフト上部から注がれる朝の光、壁面に反射する昼の柔らかな光、低い窓から差し込む夕暮れの光…。刻々と変化する光のグラデーションが、空間に陰影を生み、時間の流れを穏やかに感じさせてくれます。明るすぎず、暗すぎず、外の自然と調和するように光を受け止めることで、空間全体に落ち着きが生まれています。また、照明計画も最小限に抑え、あくまで自然光を主役にしたデザインとすることで、室内で過ごすひとときが、より丁寧に感じられるものになるよう配慮しています。

収納やキッチン、洗面といった設備はシンプルにまとめ、存在を主張しすぎないよう工夫。素材にはオーク材やリネン、国産無垢杉材を塗装した壁など、手触りや経年変化が楽しめるものを取り入れ、過ごすほどに味わいが増すよう設計しています。家具や照明も、生活動線や空間構成に合わせてセレクトし、必要最低限の中にも美しさと心地よさが宿るよう調整しました。機能を押し付けず、余白を残すことで、使い手の個性が自然とにじみ出る空間になることを意図しています。