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アパレルで15年、ハイエンドインテリアの現場を経て独立。インテリアコンシェルジュと中小企業サポートという二本柱を、「目の前の誰かの困りごとを最後まで引き取る」という同じ姿勢で束ねてきたのが、茨城県水戸市を拠点に活動する荒川 徹平さんです。住まいも事業も、立ち上がってからが本番。荒川さんは、その本番に手を届かせます。

生活と事業を“終点”まで導く、closの二本柱

 

荒川さんが手がける事業は、インテリアコンシェルジュサービスと中小企業サポートの二本柱。家具や家電、生活に伴うものすべてを整えるインテリアの伴走と、新規事業の立ち上げや運営支援といった法人サポート── 一見異なる領域に見えますが、荒川さんの中では最初から地続きの仕事でした。

「どちらか片方から始めたわけではなく、両方やろうと思って独立したんです」と荒川さんは話します。アパレル時代、販売員としての接客だけでなく、生産管理から経理事務のサポートまで幅広く担ってきた経験が、その基盤にあります。素材や工程管理、職人との調整、納期管理、そしてBtoB営業──モノが完成するまでの流れを理解し、現場で動かす「実務の横断」に長けていたのです。

その延長線上で、インテリアブランドに在籍した際には、ショールームでの顧客対応に加えて、ウェブサイトのリニューアルを担当し、ファッション誌の撮影ロケーションとしてのPR活動を行うなど、インテリア以外の領域にも自然と関わるようになりました。

「入口はインテリアでも、結局はお客様のサポート。困りごとを解決するという意味では、すべて同じなんです。」

インテリアは家具の選定だけでは終わりません。家電や調理器具、生活雑貨、収納の内側まで“日常が始まる準備”を整え、事業支援も同じように、WebやSNSに留まらず、決済・予約・レジ周り、ユニフォームの手配、現場での運用ルールの設計まで整える。「括りを外して、成果の起点と終点を定義し直す」ことで、暮らしも事業も、機能するところまで責任を持って並走する。

二本柱は別々に立っているのではなく、荒川さん自身のバックグラウンドから自然に育ち、互いに補完し合う一本の線としてつながっています。

 

 

良いものと長い時間軸に向き合う転身の理由

 

ファストファッションが勢いを増し、大量消費の空気が広がっていたころ。荒川さんが立っていたのは、東京コレクションやパリコレクションに出るデザイナーズブランドの現場でした。
その中で、価格やスピードに引っ張られていく潮流を感じながらも、「良いものを良いと伝える」軸だけは手放さなかったといいます。

「富裕層向けの仕事をしたいというより、自分自身が良いものや高額なものを扱うに値するのか、挑戦したかった」と荒川さん。
素材を選び、色を編集し、ブランドの背景にある思想を伝える——そんな仕事の姿勢は、インテリアの世界でも共通していました。

アパレルでは多くの商品が季節ごとに入れ替わるものの、インテリアはもっと長い時間を共にします。だからこそ、より良質なものを選び抜き、責任を持って届けたい。
空間全体で魅せる世界観に惹かれたのは、「美意識を長い時間軸で伝えたい」という思いが芽生えたからでした。
異分野への転身は自然な流れだったと言います。

 

 

 

独立と地元回帰 ─ 関係の密度

 

独立を後押ししたのは、コロナ禍と地元の友人からの相談でした。場所選びに迷いはあったものの、「紹介が中心の仕事なら住所は決定的条件にならない」と判断し、水戸へ拠点を移します。

東京には電車で1時間。オンラインと対面を自由に行き来し、案件に合わせた最適な距離感を保つことができます。
「東京だから案件が増えるとは限らない。大事なのは関係の質と密度を上げられる場所かどうか」と荒川さん。

仕事の中心にあるのは、場所ではなく“人”。
誰と、どんな距離で、どのくらい深く向き合えるか。
独立後は、その一点を基準に動くようになったといいます。

 

 

 

インテリアを編集する眼差し

 

荒川さんの自邸兼オフィスには、国や年代を越えて“好き”が静かに調和しています。
その基準は「気に入ったものをどう組み合わせるか」。
ファッションで培った編集の感覚が、空間にも自然と反映されているのです。

ゾーニングが巧みに設計された住まいは、働く・くつろぐ・眠るがゆるやかに分節され、余白が心地よい。
「この家に来るときに新しく買ったのは、本当に数えるほど。ほとんどが以前から使っていたもの」と話すように、買い足しは最小限。

既にある“好き”を丁寧に並べ替え、最適な位置に置き直すことで、空間はぐっと軽くなる。
インテリアもファッションも、「混ぜあわせ、整える」行為そのものにこそ、美しさの源泉があります。

 

 

 

日々の習慣に宿る、美意識という基礎体力

 

荒川さんが大切にしているのは、「整っていること」。
高価なものを揃えることよりも、日々の所作の積み重ねに美しさを見出します。

デスクに不要な物を置かない。それは情報や段取りを混在させず、次の判断をしやすい状態にしておくため。

こうした姿勢は、自邸兼オフィスとして構えた空間にもはっきりと現れています。
こだわりの家具や照明、経年を楽しめる素材を中心に構成された室内は、過度に飾り立てることなく、静かで心地よい緊張感をまとっています。訪れた人はまずその“整い方”に気づくと言います。

仕事の打ち合わせも、私生活の時間も、同じ空間で無理なくつながっていくのは、暮らしそのものに美意識を溶け込ませているからこそ。

この姿勢の背景には、師と仰ぐデザイナーから学んだ仕事観がありました。
「美しいものをつくるには、自分自身の振る舞いも美しく」。
清潔感のある装い、整理された作業スペース、段取りの良い進め方、その一つひとつが、荒川さんにとっての“美意識の基礎体力”です。

 

 

 

”外注”ではなく、”伴走する”関係を選ぶパートナーシップ

 

独立後、最も大きな変化は“優先事項の質”だったと言います。
社内の決裁や取引先との調整に左右されるのではなく、クライアントとの合意と納品に集中できるようになったこと。
「誰と、どんな約束を結ぶか」を自分で選べるようになったことが、仕事の進め方を大きく変えました。

仕事と生活の境界は曖昧で、95%が混ざっている、と荒川さんは笑います。
自宅にクライアントを招く日もあれば、図面をリビングで広げる日もある。
「人が休む時間でも動くことが成果に繋がりやすい」という身体感覚は、アパレル時代から変わりません。

委託や外注するという枠ではなく、案件ごとに伴走できる関係性をつくること。
それが荒川さんにとっての働き方の理想形です。

 

 

 

固有名詞の積み重ねが、街へと届いていくローカル観

 

”外注”ではなく、”伴走する”。
この姿勢はチーム編成にも表れています。各自が自分の生業を持ち、必要な案件に合わせてフェアな形でチームを組む。
アパレルで培った生産管理(設計・素材・縫製・物流・納品)の視点は、建築・グラフィック・店舗ディレクションにも接続し、スムーズに横断できます。

荒川さんが見つめているのは、抽象的な“まち”ではなく固有名詞の積み重ね。
特定のクライアントや取引先、経営者や職人、一軒の家族。
そのひとりひとりに誠実に伴走するうちに、結果として街の温度が上がっていく——その順番を大切にしています。

宿泊、フィットネス、観光資源の磨き上げ。
実業に近いプロジェクトの芽も、少しずつ動き始めています。

 

 

 

暮らしの質を深めるための、もう一段のケアという提案

 

暮らしにしっかり向き合いたいと考える方には、住まいへの投資とケアをもう一段深める提案をしています。
「高価さを誇るため」ではなく、「より良いものを選び、長く心地よく使えるようにするため」。

別荘案件では、家具や家電に加えて、調理器具やリネン、バスまわりの用品まで整え、到着したその日から生活が始められる状態に仕上げます。
空間が“見た目”だけでなく“日常として機能する”ところまで寄り添う。
その仕事の姿勢が、荒川さんのサービスの核になっています。

 

 

 

“整える”を更新し続ける、これからの挑戦

 

独立して得たのは、自由と責任、そして実装まで貫ける手触りでした。
そして今後も、生活と事業が軽くなる“終点”に手を伸ばしていきたいと荒川さんは言います。

線を引けば楽になる。
けれど、線の外で人はつまずく。
冷蔵庫の型番、POSの初期設定、ユニフォームの着心地、収納の仕切り——細部まで届いたとき、日常はようやく軽くなる。

荒川さんの実務は、その“軽さ”まで設計する営みです。
これからも「整える」を更新し続けながら、人と街に静かに寄り添っていきます。

 

 

荒川さんの話は、職種の違いを越えて「誰かの困りごとに、どこまで寄り添えるか」という問いへ帰着していました。括りを外し、成果の起点と終点を引き直す。シンプルで、難しい。けれど、暮らしと仕事が確かに軽くなる道筋でした。