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茨城県結城市の穏やかな郊外に位置する「ヘアサロンゾラ|Hair Salon Zora」と「アン バロン|Un ballon.」は、竹内寿さんと絵美さんが夫婦で運営する美容室と洋菓子店です。同じ建物の1階にそれぞれ独立した入り口を持ちながら、個性的な空間を創出しています。それぞれの店舗が5年目を迎える中、夫妻はビジネスの立ち上げ、日々の喜びと挑戦、そして未来への展望について語ります。

寿さんが美容師を志すきっかけとなったのは、高校生の頃に始まりました。ファッションやデザインへの興味がありましたが、進路相談の場ではデザイナーなどクリエイティブな職種としてのキャリアについて具体的なアドバイスが得られませんでした。この時、美容師としてならば自分で店を持つことも可能であり、専門学校や業界で活躍する先輩の紹介ができるという先生からのアドバイスがあり、この職業への道を選びました。さらに、父親が事業経営者であったことから、幼い頃から経営者になるようにとの期待を受けており、何か自分で事業を行うこと、自由に決定し、行動することの魅力に惹かれていました。これらの経験と影響が、彼の独立心を育て、将来的に自分の店を持つという夢を抱くに至りました。

美容学校を卒業後、寿さんは東京の世田谷と恵比寿で美容師としての基礎を学びました。その後、地元茨城県でさらに経験を積み、複数のサロンで店長としての役割も経験。これらの経験が彼の技術だけでなく、顧客サービスや店舗運営のスキルを磨くことに大きく寄与しました。

「自分の店を持つことが、最終的な目標でした」と寿さんは言います。

絵美さんは20代の頃からアパレル業界やカフェに興味を持ち、都内に頻繁に通いながら、いつか自分のお店を持ちたいという夢を漠然と抱いていました。20代の頃、結城にあった喫茶店で働き始めたことが、彼女のカフェや洋菓子への興味を一層深めるきっかけとなりました。その後、パン作りのスクーに通い、お菓子作りの技術を習得。「パン作りのスクールに通い始めたのは、いつか自分の店を持ちたいと思ったからです。フランス旅行がその夢をさらに膨らませてくれました」と絵美さんは述べています。

フランスへの初訪問は、寿さんの提案によるものでした。結婚後、寿さんが提案した3ヶ月間の世界旅行の最初の国がフランスであり、その文化、食事、人々との出会いが絵美さんに大きな影響を与えました。絵美さんは特に、フランスの地方菓子とその製造者たちの情熱に感銘を受け、自分のお菓子作りにその精神を取り入れるようになりました。それから彼女はフランスへ頻繁に訪れ、長期滞在を重ねることで、さらに多くのインスピレーションを得ています。

「フランスへ行くことを提案してくれた寿さんにはとても感謝しています。」

竹内夫妻がヘアサロン「Zora」と洋菓子店「Un ballon.」を開業した地、茨城県結城市の選定には、お店に対してのビジョンと実用性の両面が大きく影響しています。寿さんと絵美さんはともに結城市のとなり、筑西市出身であり、勤め先が栃木県と古河市方面にあったため、住む場所として結城市が中間点に位置し、彼らにとって最適な場所でした。

夫妻が店舗用地を探し始めた際、2店舗分の駐車場を確保できる広さと、美容室に適した目立つ立地を条件に挙げていました。絵美さんがたまたま通りかかった現在の土地に目を留め、近くで問合せの看板が倒れているのを見つけました。すぐに連絡を取り、土地が調整区域であることを知らされましたが、商売をすることを前提に土地を譲ることができるとの回答を得ました。これを受けて、家族に相談し、皆で現地を訪れた後、その流れで不動産会社に足を運び、土地を確保することを決めました。

この土地は200坪という広さがあり、予算とのバランスが取れるだけでなく、4車線の道路に面しており、ちょうど交差点もあるため、反対車線からのアクセスも容易でした。さらに、地主さんとの良好な関係も決断を後押ししました。

竹内夫妻は、ヘアサロン「Zora」と洋菓子店「Un ballon.」の店内空間を、シンプルかつ洗練された雰囲気でお店づくりをされています。彼らの共通の趣味であるアンティークの家具やパーツ、建具を店作りの中心に据えながら、ただ古いものを集めるのではなく、どのアイテムも店の全体的なデザインと調和するよう厳選されています。

「店内に並ぶアイテムは、インダストリアルな雰囲気や自らの好みに合うものを選んでいます。具体的には、椅子やテーブルなど個々のアイテムとの相性を重視し、それぞれが店内の他の要素とどのように調和するかを考慮に入れています。」彼らは定期的にアンティークショップを訪れ、選び抜かれたアイテムを取り入れています。

竹内夫妻が特に信頼しているのは、栃木県佐野市にある「SETT F.(https://www.sett-furniture.com/)」さん、栃木県那須にある「Maria’s Country Antiques(http://www.maria-nasu.com/)」さん、そして東京都青梅市にある「ランデヴードブロカント(https://de-brocante.ocnk.net/)」の3つのアンティークショップです。これらのお店からは、彼らの感性に合う、質の高いアンティーク品を仕入れることが多く、店舗デザインの一貫性を保つために重要な役割を果たしています。

「店内の目を引く窓は、フランスの城で使用されていたもので、ランデヴーさんで購入しました。」この窓は店が建つ前から気に入り、設計者の本橋さんにも事前に設計に取り入れる相談をしていたそうです。

竹内夫妻のヘアサロン「Zora」と洋菓子店「Un ballon.」、そして住居を含む建物全体の設計には、地元結城の建築家、本橋浩巳さんが手がけています。プロジェクトの最初から深く関わった本橋さんは、「まずは図面を引いてみよう」という提案でプロセスをスタートさせました。この初期のアイデアがすべての設計作業の基盤となり、そこからさまざまな調整と提案が繰り広げられました。

「おかげで、店舗空間は本橋さんの設計により予想以上に広く感じるようになりましたし、異なる二つの業種が一つの建物に調和して配置されています。」

本橋さんのデザインは押しつけがなく、夫妻の希望を尊重しながらも洗練された機能的な空間を創り上げています。竹内夫妻は、本橋さんの協力により夢に描いていた以上の店舗を実現でき、「彼の支援があったからこそ、理想を超えることができました」と感謝の念を述べています。

竹内夫妻が運営するヘアサロン「Zora」と洋菓子店「Un ballon.」の名前には、それぞれ特別な思い出と意味が込められています。

ヘアサロン「Zora」の由来

ヘアサロン「Zora」の名前は、竹内夫妻が旅行中に宿泊した「Hotel Zora」というホテルからインスピレーションを得て名付けられました。このホテルはパリにある古き良き雰囲気のホテルで、古本に紛れた管理人のおじいさんや軋む階段、昔ながらの扉の鍵が印象的で、不便さもありつつ雰囲気のある場所でした。このホテルでの経験は、旅のスタートでもあり、夫妻にとって特別な意味を持つものとなりました。
そのホテルの名前を拝借し、サロンに「Zora」と名付けることで、その素敵な記憶を日常に取り入れたのです。

 

洋菓子店「Un ballon.」の由来

「Un ballon.」という店名はフランス語で「一つの」という意味があり、また「風船」を意味する言葉でもあります。絵美さんは、風船に願いを託して空に飛ばすという風習からインスピレーションを受け、自分の作るお菓子が多くの人々に届き、その思いが広がっていくことを願ってこの名前を選びました。
彼女にとって、それぞれのお菓子は一つ一つが特別な意味を持ち、訪れるお客様への愛と感謝の気持ちを形にしたものです。

これらの名前には、夫妻の旅の記憶と愛情、そしてお客様への思いやりが込められており、それぞれの店舗が提供するサービスと見事に一致しています。

竹内夫妻は、彼らの店が単なるビジネスではなく、お客様にとって新しい発見や冒険のきっかけになる場所であることを願っています。

寿さんは特に、ヘアサロン「Zora」がお客様に新しい何かを始めるきっかけを提供できる場所だと考えています。「お客様がヘアカット後に『せっかくなのでどこか寄ってみよう』と言ってくれるとき、それがとても嬉しいんです。小さな変化が人生に新しい趣味や活動をもたらすきっかけになれば、と思っています」と寿さんは明るく語ります。さらに、彼はお客様との会話の中で興味を引くかもしれない本や映画についても自然と話題にすることがあります。

絵美さんもまた、お客様との個々の交流を大切にしています。「お店に来てくれた人には、私がお気に入りのカフェやお店を紹介することもあります。それが誰かの新しい挑戦のきっかけになれば、とても嬉しいんです」と話します。彼女のフランスでの経験に関する話は特に人気があり、特にファッション業界でキャリアを目指す若者からフランスのおすすめスポットについてよく質問されます。そうした時、絵美さんは自らが選んだお店のリストを提供し、顧客のフランス旅行をより豊かなものにするための助けとなっています。

このように、竹内夫妻はお客様一人ひとりに寄り添うことを大切にし、彼らの日常に新しい風を送り込むことで、お店もお客様も共に成長し続けています。この姿勢がお客様からの厚い信頼につながり、夫妻のビジネスをさらに豊かなものにしているのです。

それぞれ日常生活で大切にしているものはありますかと問いました。
寿さんは、映画を観ることが特に好きで、特定のジャンルにはこだわらず、幅広い映画を楽しんでいます。また、絵美さんも映画が好きで、特にアクションが多い4DXの映画(たとえば「ジュラシックパーク」など)を楽しんでおり、時には寿さんを誘って二人で映画館に足を運ぶこともあります。

絵美さんは、日々の暮らしの中で笑顔を絶やさないよう心がけており、常に前向きな姿勢を保つよう努めています。「笑顔でいることで、周りも明るくなると感じています。また、何か新しいことに挑戦したり、行ってみたいところへ実際に足を運ぶことで、自分自身をリフレッシュできるんです」と絵美さんは話します。彼女にとって、新しいことへの挑戦や旅行は、生活の中で欠かせない活力源となっており、先日家族で行った台湾旅行もその一例です。

「旅をすることでいつも新しい刺激を受けて、日々の原動力になっています」

それぞれの店舗を運営することについて、竹内夫妻は互いに大きなサポートとなっているようです。絵美さんは、それぞれのお客様を紹介し合うことで相乗効果を感じており、この協力関係がビジネスの成功に寄与していると感じています。「メリットしか感じていないんです。お客様を互いに紹介し合うことで、両方の店舗が利益を得ていますし、お互いの忙しさを理解し合えるので、家庭内での料理や家事もスムーズに分担できています」と絵美さんは説明します。

さらに、夫妻の関係性もこの共同運営によって強化されているようです。コロナ禍での経営が難しい時期には、寿さんが絵美さんのビジネスに口を出すこともあったとのことですが、その基盤には夫妻としての深い信頼感があります。
「確かに時々口を出すこともありますが、それはお互いを思ってのこと。何よりも、お客様を共有できる部分が大きいので、そこが一番の強みです」と寿さんは付け加えました。

このようにして、竹内夫妻はそれぞれの店舗を運営しながらも、お互いを尊重し支え合っている様子が窺えます。彼らのビジネスだけでなく、夫婦としての関係も相乗効果によってさらに強まっているようです。

竹内夫妻は、自分たちの事業への深い愛情と、美容業界への貢献をこれからも続けるつもりです。寿さんは、美容師としての仕事に毎日夢中になり、その仕事に大きな喜びを感じています。「美容師をやめようと思ったことは一度もないんです。これからも、私が受けた応援を後輩たちにも伝えていきたいと思っています」と寿さんは柔らかく語ります。

また、彼らの店舗周りに広がる広い庭を活かし、将来的には美しい庭づくりにも挑戦したいと考えています。「お客さんにもっとリラックスしてもらえるような空間を作りたいんです」と夫妻は計画を明かします。

美容室「Zora」も最近、改装を終えてスペースを広げ、より快適な場所へと生まれ変わりました。
絵美さんは、「Un ballon.」の新たなテラスを活かし、来店客に新しいデザート体験を提供することを楽しみにしています。「テラスでゆっくりデザートを楽しんでもらえたら、それに越したことはないですね。1人で全部準備するので少し時間がかかるかもしれませんが、「常連のお客さんは、ちょっと時間がかかることもあるんですが、その辺は温かく見守ってくれています」と絵美さんは言います。さらに、早朝からのお菓子作りが体力を要するため、彼女は「体調を崩さないようにしっかり健康にも気を使っています」と健康管理にも気を配っています。

竹内夫妻は、来店されるすべての方に、ただ美容やお菓子を提供するだけでなく、心からのおもてなしを通じて特別な体験を提供することに尽力しています。彼らの店は、単なる商業施設以上のもの、地元で愛されるコミュニティの一部として成長しています。未来に向けても、彼らは新しい挑戦を楽しみながら、お客様一人ひとりにとって忘れられない場所であり続けることを目指しています。